空飛ぶクルマ、次世代空モビリティで実現する未来の移動手段
2023年3月7日世界中で検討が進んでいる、空飛ぶクルマ。日本政府は、2025年の大阪・関西万博やその後の都市部での活用のみならず、過疎・山間部・離島等の地域の足や災害時の物流・交通手段として次世代空モビリティ(Advanced Air Mobility)の社会実装を目指しています。空飛ぶクルマが実現することで、様々な地域の課題を解決すること、それによってどこにいても豊かな暮らしが実現できることが期待されています。実際に、機体開発や周辺ビジネスの検討に多くの企業が参入し始め、新たなビジネスとして注目されています。 本記事では、次世代航空モビリティに着目し、昨今の世界および日本の動きや更なる革新に向けて必要なものについて解説していきます。 空飛ぶクルマとは 従来までの航空モビリティは、ヒトの移動に主眼を置いていました。今まではクルマが空を飛ぶという考え方を基本として航空モビリティの開発が進められてきたように思います。しかし、2002年に空の産業革命が起こりました。NASAが発表した「Personal Aerial Vehicle(PAV)」の考え方は、一般実用化に向けてモノを含めた移動に注目しています。これは次世代航空モビリティといわれ、1990年代より欧米で政策課題として検討されてきた、「スマートシティ」実現のための最重要手段である都市部交通改革の切り札とされています。PAVは「地上交通を改革するための、手軽に空の利用ができる航空機」として名称も「Urban Air Mobility(UAM)」と表現されるようになり、これが今日では国際標準用語として定着しました。 それでは、次世代航空モビリティの国内外の動向はどのようになっているのでしょうか。 次世代航空モビリティの世界および日本の動き 次世代航空モビリティには、現在様々な企業が参入しており、市場が拡大を続けています。まずは、海外の動向から説明します。国の動向として、UAMの市場が最も大きいと予想されるアジア太平洋地域を紹介します。UAMの市場について、中国とインドを除く上位3か国は日本、韓国、シンガポールと予測されており、本記事では日本、韓国、シンガポールにおける政府の動きについて解説します。韓国政府は2025年を目途に金浦・仁川空港とソウルの都心を結ぶ専用航路を開設すると発表しました。これを機に多くの企業が参入競争を展開しており、大手企業も米国と連携しながら機体開発に大きな資金を投入しています。また、シンガポールはアジアで最も早く海外企業が開発したUAMを導入し、専用の離着陸場(Vertiport)建設など社会インフラ整備を開始しました。さらには、アジア最大級のMROを中心とする航空宇宙工業団地を持っており、ここには多くの航空機技術の人材と試験設備、隣接するテストフライト専用空港が整備されています。 また、海外企業の動向について、一部企業の例を挙げて説明します。ここではUber(ウーバー)・Airbus(エアバス)・Boeing(ボーイング)を取り上げます。世界で最初に航空モビリティへ参入した企業であるUberは、自動車・自転車・電動キックボードといった地上モビリティサービスの提供を実施してきましたが、次世代航空モビリティである電動型の垂直離着陸が可能なeVTOLでの空輸も加えた理想的な展開を試みており、2020年より試験飛行を開始して2023年にはサービス実現化を目標としています。また、米国航空製造業の大手であるAirbusの特徴はテクノロジーの高さを生かした機体作りです。2019年には「Vahana」という試験機による7分間飛行に成功し垂直離着陸も実現させ、電動型マルチコプター「CityAirbus」を開発中です。またAirbusでは都市部輸送サービス「Voom」を展開し、スマートフォンアプリにてヘリコプター予約ができるシステムも開始しています。次に、旅客機としても馴染みのあるBoeing社も電動航空機開発の強化に着手し始めています。2019年に電動有人試験機の初飛行に成功し、その成果を生かして他社とのパートナーシップ構築も進めている現状です。すでにKitty Hawkとのエアタクシー分野での連携やポルシェとのeVTOL共同開発も公表しています。また日本の経済産業省と技術協力の合意を締結しています。 次に、日本での取り組みについて説明します。日本では、都市部での送迎サービスや離島や山間部での移動手段、災害時の救急搬送などの活用に向けて開発が進められています。これに向けて2018年に「空の移動革命に向けた官民協議会」が立ち上がり、日本における航空モビリティ産業は明確なフェーズ変化がありました。 実現に向けて特に現在力を入れているのが、経済産業省と国土交通省が中心となり実施している、航空モビリティに関する制度設計です。これに注力している理由は、次世代航空モビリティが社会に受け入れられるためには「安全性」の確保が必要不可欠であり、そのために制度をどのように設計するかが最重要と考えられているためです。制度の検討にあたっては米国のFAA(Federal Aviation Administration)や欧州のEASA(European Union Aviation Safety Agency)とのBASA(Bilateral Aviation […]
アウトクリプト、車載ソフトウェア開発におけるAutomotive SPICE CL2認証獲得
次世代のモビリティ社会の実現に向けた自動運転セキュリティ及びMaaSソリューションを手掛けるアウトクリプト株式会社(AUTOCRYPT Co., Ltd.、https://www.autocrypt.jp、本社:韓国ソウル、代表取締役 金・義錫、以下アウトクリプト)は、この度、車載ソフトウェア開発プロセスのフレームワークを規定した自動車業界標準のプロセスモデル「Automotive SPICE CL2」の認証を獲得いたしました。 Automotive SPICE(Software Process Improvement and Capability dEtermination:A-SPICE)は、車載ソフトウェアにおけるプロセス評価やプロジェクト及び組織レベルでのプロセス改善のためのモデルとして導入が進んでおり、グローバルOEMによるサプライヤー選定プロセスに活用されるなど、事実上の業界標準として認められる権威を確立しています。 中でも、CL2(能力レベル)はソフトウェア開発に必要なプロセスが実施され、成果物管理が適切にされていることを証明するもので、当社は、車載SoC(System on Chip)上にセキュア領域を実装する「AutoCrypt IVS-TEE」についてAutomotive SPICE CL2認証を獲得しました。セキュリティ・アプリケーションを分離するためのソフトウェア環境を実現し業界標準に準拠していることが認められたもので、自動車サイバーセキュリティ分野における先進的なレベルを達成しました。 アウトクリプト 代表取締役 金・義錫は、次のように述べています。 「ADAS(先進運転支援システム)、車載インフォテインメント(IVI)など、車載アプリケーションの高度化によってソフトウェアコンポネントの重要性は益々増加する一方で、グローバルOEMは車載ソフトウェアの品質管理に対する要求をこれまで以上に高めています。当社は、自動車サイバーセキュリティに対する豊富な経験をもとに、一段厳しいとされるAutomotive SPICE CL2認証を獲得することができました。今後は、グローバルOEMとのパートナーシップ強化を図るとともに、セキュアブート(Secure Boot)、アップデートなど、APIセキュリティと連携していくことで、ソフトウェアセキュリティの向上とともに製品ラインナップ強化を進めてまいります。」 […]新たな移動概念の登場、MaaS(Mobility as a Service)とは?
2023年2月27日移動の革命といわれている、MaaS。当初交通業界で注目を集めていましたが、昨今業界範囲を拡大し、物流や医療・福祉業界においても注目されています。MaaSにより我々の生活がより便利に、そして快適になると言われていますが、MaaSとは具体的にどのようなものか、MaaSにより我々はどんなメリットを享受できるのか、日本におけるMaaSの統合レベル、MaaS実現のために必要なものについて本記事で解説していきます。 MaaSとは MaaS(Mobility as a Service)とは、複数の交通機関や移動に関わるテクノロジーを最適に組み合わせて人単位の移動ニーズに合わせて検索・予約・決済できる移動サービスとして統合することと定義されてきました。しかし、昨今はMaaSの概念が物流など様々な領域に拡張しており、MaaSが日本より先行している海外においても研究者によってMaaSの定義内容や適用範囲が分かれており不明瞭となっています。ただ、分かっている範囲に限っても、MaaSは複数の交通機関(鉄道、バス、タクシーなど)とそれ以外の業界(物流、医療・福祉、小売りなど)のサービスの連携により、利用者の需要に応じた地域の課題解決につながる重要な手段といわれています。では、具体的にどのような地域の課題をMaaSが解決できるのでしょうか。 MaaSで解決できる地方課題 MaaSを使用することで、地域が抱える各種課題を解決できるといわれています。解決できる地域課題について一例をあげると、地域や観光地における移動の利便性向上、既存公共交通の有効活用や、外出機会の創出と地域活性化、スマートシティの実現などがあります。ここでは、MaaSがどのようなことを実現し、どのような地域課題を解決するのか一つずつ説明します。 既存公共交通の有効活用による都市部の交通渋滞の解消 MaaSが普及することで、鉄道やバス、飛行機など複数の公共交通機関の利用ハードルが下がったり、タクシーやレンタカーを定額で使えたりするようになります。これにより自家用車を使用する人が減り、都市の交通渋滞が減少すると考えられています。 外出機会の創出による地方の地域活性化 MaaSにより乗合タクシーやバスが手軽に利用できるようになることで、公共交通機関の利用者数が少ない地方在住者や、自動車免許を返納した高齢者が移動手段を確保して外出することが容易になります。また、移動手段が限られているという理由で観光客の足が遠のいてしまう観光地域に対して、MaaSによる移動の利便性向上により、観光客が往訪するハードルが下がることが想定されます。これらの多数の観光客によって、地域活性化が見込まれます。 サービスの組み合わせによるスマートシティの実現 MaaSにより、個人の需要に合わせた形で公共交通機関や複数の業界サービスを組み合わせて利便性と快適性を提供することが可能になります。そのため、AIやIoTのデジタル技術を駆使してデータを収集し、活用するスマートシティの実現に近づきます。 このようにMaaSを用いることで、ユーザ一個人の利便性や快適性の向上だけでなく、さまざまな地域課題を解決することもできます。これほどメリットがあれば、実現させたいと思う方も少なくないでしょう。それでは、日本のMaaS実現レベルはどの段階にいるのでしょうか。 MaaSの世界及び日本の動き MaaSの実現には以下のような統合段階があるとスウェーデンのチャルマース大学の研究者によって提唱されています。それぞれの段階について説明し、日本がどの段階にいるか明示します。 レベル1:情報の統合 2023年、日本はこの段階にいます。複数の交通機関を横断した検索のみ可能です。ただし、複数の交通機関を横断した予約や支払いをすることはできません。つまり、ユーザの目的地を考慮し、複数公共交通機関を用いて最適なルートを検索する情報は統合されています。 レベル2:予約、決済の統合 複数の交通機関を横断した検索や予約、支払いを一つのサービスとして一括で実施できるよう統合されています。 レベル3:サービス提供の統合 世界初のMaaSプラットフォームであるフィンランドの「Whim(ウィム)」がこの段階にあたります。一つのプラットフォームを個人が利用して複数の公共交通機関の利用ができる統合レベルを指しています。 […]EVセキュリティ、EV市場の拡大に不可欠なもの
2023年2月17日前編では「日本のEV市場で日産の活躍、その理由を徹底分析!」について説明しました。詳しくは記事を参考にしてください。 世界中で加速している脱炭素社会に向けた取り組み。その中でも近年急激にEV市場が日本で注目されてきています。前回は、日本EV市場が注目されるようになった理由とそのトリガーについて説明しました。今回は、EV市場の更なる拡大に必要不可欠といわれるセキュリティ対策について解説していきます。 拡大し続ける自動車セキュリティ市場 世界の自動車サイバーセキュリティ市場は2027年までに86億1000万米ドルに達すると予想されています。この自動車サイバーセキュリティ市場の成長は、特にEVセグメントでのコネクテッドカーの増加と、規制機関による車両データ保護の義務化に起因しています。 まず、EVセグメントでのコネクテッドカーの増加について説明します。常時インターネットに接続可能なコネクテッドカーは2025年には世界で2億台以上が走行すると予測されており、各自動車メーカーがAI、デジタルコクピット、データ活用ソリューションを活用したビジネスモデルの確立を急いでいます。 次に、規制機関による車両データ保護の義務化について説明します。2021年1月に国連欧州経済委員会(UN/ECE)の下部組織である「自動車基準調和世界フォーラム」から発効されたサイバーセキュリティ法規「UN-R155」に則り、欧州や日本では2022年7月以降に発売される一部の車両から、セキュリティ対策が十分でない車両への規制が始まっています。 つまり、EV市場の拡大に伴ってセキュリティ市場もさらに拡大し続けると予想されています。 自動車の進化、それに伴うリスクとは 技術の進化により、自動車を「走るコンピュータ」といっても過言ではなくなってきました。実際に、自動ブレーキや前車追従機能、レーンキープアシスト(LKA)などの運転支援を行う「ADAS」(先進運転支援システム)が導入された自動車が増えてきています。ちなみにこれを実現しているのは車載の電子制御システムです。また近年、自動車メーカーにて自動運転や自律運転を実現するため更なる開発が進められています。これには、自動車同士、あるいは自動車と各種インフラ(道路情報システムなど)が通信しあい、クラウドと接続し続ける必要があります。 コンピュータがハッキングされても、直接人命にかかわるようなケースはこれまで少なかったため、セキュリティの重要性をそこまで実感しない方も多かったのではないでしょうか。しかし自動車にはコンピュータと異なる特有のリスクがあり、ハッキングが人命に関わる事故につながる可能性が非常に高いといわれています。例えば、悪意ある攻撃者が自動車の専用ネットワークを経由し、中枢コンピュータ(ECU=Electronic Control Unit)に侵入し、システム情報を窃取する、もしくはシステム自体を乗っ取って、思うままに電子制御システムをコントロールしてしまう恐れがあります。攻撃者のコントロール下におかれることにより電子制御システムが運転者の意図しない動作を引き起こせば、そこに乗車している人の安全性だけでなく、周囲の人々や他車両への危害につながります。また、車両が無線ネットワークと接続していれば、複数の車両に対して同時に攻撃が行われる可能性があり、一つのハッキングがテロのような社会的な混乱を引き起こす恐れがあります。さらに自動車の走行履歴や位置情報、車載インフォテインメント(IVI)からのコンテンツ情報、それに付随する個人情報などを窃取される可能性もあります。 脆弱と指摘される、EVの充電スタンド EVの充電スタンドは、攻撃者が攻撃しやすい入口として狙う可能性が高いと推測されています。なぜならば、充電スタンドはインターネットに接続されており、EVを充電する際に自動車とEVハブの間でデータ通信が行われていますが、充電スタンドに対して実施されているセキュリティ対策は不十分であることが懸念されているからです。実際に攻撃者が充電ハブに不正アクセスした場合の懸念事項として以下の四つの点が挙げられています。 ユーザの安全に対するリスク EVの充電ポイントを経由して車両のシステムにアクセスされ、運転者が意図しない動作により周りの車両を含む安全性が失われる可能性があります。 EV充電ネットワークの侵害 1つのデバイスの脆弱性が悪用されたことを発端にして、充電ハブのネットワーク全体が破壊される可能性があります。その結果、そのネットワーク全体に混乱が生じる可能性があります。 商業的損失 EVハブのネットワークを停止させるだけでなく、事業者の管理ソフトウェアにアクセスして例えばランサムウェアに感染させ、結果として金銭的な損害やその企業が風評被害を受ける可能性があります。多くの商用車がEVに移行していれば、パソコンから配送業務全体を停止させることも可能にしていまいます。 決済システム EVハブの決済システムが侵害され、ドライバーやネットワーク事業者に金銭的損失が発生する危険性があります。また、EVの充電スタンドでやり取りされた顧客のクレジットカード情報なども狙われる対象になりそうです。 自動車セキュリティに関わらず、データのやりとりが発生する経路、つまり通信を安全に行うためにセキュリティ対策が必須と言われています。EVにおいても全ての通信に対するセキュリティ対策が重要とされており、その中でも特に前述したECUを介した車両の通信へのセキュリティ対策と、充電時における車両とEVハブの間でのデータ通信に対するセキュリティ対策が必要となります。 […]