日本のEV市場で日産の活躍、その理由を徹底分析!
2023年1月27日世界中で加速している脱炭素社会に向けた取り組み。その中でも近年急激にEV市場が日本で注目されてきています。今回は、日本のEV市場が注目されるようになった理由とそのトリガー、そしてEVに求められるセキュリティ対策について二回に分けて解説していきます。 軽EVをトリガーに立ち上がる日本のEV市場 日産「サクラ」は、2022年夏から年末にかけて4万台以上の受注が入るほどのヒット商品となっています。その理由は上段で説明したデメリットを解消するだけでなく、走りから乗り心地、内装までさまざまな質が高められているからです。これまでEVはエコや環境という文脈で語られることが多かったのですが、日産「サクラ」は日本初の軽自動車サイズEVであることで、(1)手ごろな価格設定、(2)車としての魅力を実現しています。 手ごろな価格設定 日産「サクラ」は、軽自動車であるという特性を活かして、手ごろな価格設定に近づけるため、電池容量をあえて20kWhにおさえています。これにより航続距離は180kmと短くなってしまいますが、日産の同規格ガソリン車ユーザーの1日平均走行距離30kmを踏まえると、普段の利用シーンでは問題になりにくいと考えています。また、電池容量以外でも部品の共用化によってコストを下げています。例えば、駆動モーターには、ハイブリッド車の日産「ノートe-POWER」や、プラグインハイブリッド車の三菱自動車「アウトランダーPHEV」などに搭載する小型モーターを使っています。また、プラットフォームも軽エンジン車「デイズ」と共通にすることで開発コストを抑えています。さらに、手ごろな価格設定を実現するため、EVに対する経済産業省や自治体から交付される補助金がカギとなっています。経済産業省からは55万円を、届け出する自治体によりますが、一例として東京都は45万円と高額であるため、交付額の合計は100万円に達します。これを踏まえると、自治体によってはEVの方が同規格のガソリン車よりも低額となるケースもあります。 車としての魅力 日産「サクラ」は、軽自動車の常識を超える195N・mという高トルクを実現しています。これは軽エンジン車「デイズ ターボ」の約2倍に当たり、軽自動車の非力さを感じさせず、高速道路の合流場面など様々なシーンでの軽自動車のデメリットを払拭した商品となっています。また、EVはモーター駆動のみでエンジンを搭載していないため、ノイズはハイブリッドと比べても圧倒的に小さく、加速の仕方もなめらかです。加えてモーターは瞬発力が強く、停車中や巡航時にアクセルペダルを踏み増した時の加速感は独特の迫力があり、運転感覚も楽しさがあるものとなっています。 これらから、日産「サクラ」は軽自動車として初の快挙である2022─23年の「日本カーオブザイヤー」において年間最優秀車賞を獲得しています。軽EVをトリガーに、日本のEV市場に変化が起きつつあります。 EVの普及が世界中で推進されている背景 2015年、温室効果ガス排出削減について努力目標を掲げたパリ協定が採択されました。ここから、世界中の脱炭素社会に向けた取り組みが動き出しました。その取り組みの一つとして、EVの普及推進が挙げられます。 日本では、2020年10月に菅元首相が「2050年のカーボンニュートラル実現」を宣言し、同年12月には「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略(以下、グリーン成長戦略)」が策定されました。2021年1月、菅元首相は施政方針演説で「2035年までに電気自動車(EV)と燃料電池自動車(FCV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、ハイブリッド自動車(HV)で新車販売100%を実現する」旨を発表しました。その後、同年6月に公表された「(改訂版)グリーン成長戦略」にはその旨が明記され、事実上、将来的なガソリン車の販売禁止が表明されています。このように世界中でEVの普及が推進されていますが、実際の日本と世界のEV普及状況はどうなのでしょうか。 今までの日本のEV市場について まず、日本の状況について紹介します。実は、2021年の新車販売台数約240万台のうち、日本のEVの販売台数は2万台強にとどまっています。これを割合に換算すると、新車販売台数のうちEVの販売台数は約0.9%しかありません。 一方でヨーロッパ主要18カ国の2021年の新車販売台数に占めるEVの割合は約11%です。電気自動車先進国といわれているイギリスの場合、2021年の新車販売台数のうち約11.6%がEVの販売台数となっています。また、アメリカにおける2021年の新車販売台数は約1,493万台で、そのうちEVが占める割合は約2.9%です。電気自動車先進国でない他国と比較しても、日本の普及率は特に低い水準にとどまってしまっていることがわかります。 では、日本ではなぜEVの普及が遅れてしまっているのでしょうか。本記事では、そのうち5つの理由を紹介します。 車両価格が高い EVと一般的なガソリン車を比較すると、EVは車両価格が高く、消費者が購入しにくい商品となってしまっています。日産「リーフ」は330万円以上、ホンダの「Honda e」は450万円以上と、同クラスのガソリン車・ハイブリッド車と比べるとかなり高額です。この理由は、EVに搭載されている充電池であるリチウムイオン電池に起因します。高価なリチウムイオン電池の機能を代替する安価な電池が見つかっていないため、コストが高止まりしてしまっているのです。 航続距離が短い EVはガソリン車と比較すると、航続距離が短い、つまり1回の充電で走行可能な距離が短いことで知られています。現在、平均的な仕様でクルマを走らせたときの航続距離は、日産「リーフ」で322km、ホンダ「Honda e」で256kmと公表されています。一方でガソリン車の航続距離は600km以上であるため、通勤や日用品の買い物などの日常的な利用には問題ありませんが、(3)で紹介する充電スタンドの整備状況も踏まえると長距離のドライブには不安を残します。 車種が少ない これまで日本の自動車メーカーはEVに注力しておらず、ガソリン車やハイブリッド車に注力してきました。そのため、販売されてきたEVの車種は限られています。日本の車メーカーから発売されているのは日産「リーフ」「アリア」、ホンダ「Honda e」、商用車の三菱「ミニキャブ・ミーブ」のみで、日本の新車市場で約4割を占める軽自動車はこれまで販売されてきませんでした。 充電インフラが十分に整備されていない […]
世界最大の展示会CES2023で確認した次世代モビリティ技術
2023年1月17日アメリカのネバダ州にあるラスベガスは24時間営業するカジノのようなエンターテインメントを楽しむ観光地で有名ですが、企業にはある展示会が開催される場所としてよく知られています。それは世界最大規模の展示会「CES」です。「Consumer Electronics Show」の略であるCESはもともと家電製品やIT機器を中心とする展示会でしたが、出展カテゴリーを拡大して多様な次世代技術が確認できるデジタル総合展示会へと変わりつつあります。 CESを見たら数年先の未来が分かるというほど影響力のある展示会であり、その影響力に相応しい最先端の技術やその技術を使った製品を確認することができます。最近では、モビリティ分野までカテゴリーが拡大され、もはや世界最大規模の自動車ショーといえるほど多くの次世代モビリティ技術が確認できる場になっています。今回のCES 2023は1月5日から1月8日までラスベガスの会場ラスベガスコンベンションセンター : LVCCで開催されました。展示会には約3,200社以上が出展、世界各地から11万人以上が参加し、CES 2022と比べたら出展社数も参加者も倍以上になり、コロナ以前の規模に近づいた状態になりました。 CES 2023で注目したトレンドはメタバース、モビリティ、ヘルスケア、サステナビリティ、この4つでした。その中でも、当社はモビリティを中心にCES 2023を視察してきましたので、その現場をお届けしたいと思います。 今回のCES 2023では自動運転やCASE時代に必要な自動車及びテクノロジーを確認することができました。今回のCES2023でも話題になった、次世代モビリティの概念として使われている言葉がソフトウェア定義型自動車(Software-Defined Vehicle、SDV)です。ソフトウェア定義型自動車(SDV)はハードウェアとソフトウェアを分離して、開発したソフトウェアを様々なハードウェアに実装することで、従来の自動車では体験することができなかった、新しい価値を提供できるようになります。したがって、ソフトウェア定義型自動車(SDV)が普及されたら、自動車産業において重要になるのはハードウェアではなく、ソフトウェアになります。 ソニー・ホンダモビリティが作ったプロトタイプのEV自動車「AFEELA」はソフトウェア定義型自動車(SDV)として開発された次世代モビリティの1つの例だと言えるでしょう。「モビリティと人のコミュニケーション」をテーマとして作り上げたAFEELAは、自動車の外にいる人とコミュニケーションできるメディアバー、内部で音楽や映像、ゲームも楽しめるディスプレイ等、自動車の内・外部に搭載した45個のセンサやディスプレイを活用して人とのコミュニケーションを積極的に取ろうとしたデザインになっていました。 また、CASE時代に使われそうな未来型目的基盤車両(PBV)もたくさんありました。韓国の自動車部品企業である現代モービスが開発している未来型目的基盤車両(PBV)コンセプトモデル「M.Vision TO」とApplied EV社の「Blanc Robot EV」が人々からの関心を集めました。現代モービスの未来型目的基盤車両(PBV)は顧客のニーズに合わせて設計することができるモジュール化された車両であり、モビリティとして、運送や居住目的としても利用できます。Applied EV社の「Blanc Robot EV」もモジュール化された車両で、運送及び特定分野に合わせて活用できるようにカスタマイズできます。両コンセプトモデルは自動運転で動くように設計されているため、人々は運転するのではなく、移動しながらエンターテインメントを楽しむことができます。 CES 2023で確認した次世代モビリティ技術は「移動しながら車内で提供できること」を考えている段階になっていました。ソニー・ホンダモビリティのAFEELAは車とエンターテインメントの融合を、現代モービスとApplied EV社は車両の利用目的に合わせてサービスを提供することに焦点を当てています。ソフトウェア定義型自動車(SDV)やCASE時代で「運転」は必須ではなくなります。したがって、移動する時間に経験できる何かを提供することが、これからの自動車産業の鍵となるでしょう。しかし、この経験は完全自動運転を前提にしていますので、安全に自動運転できるようにする技術、つまり「セキュリティ」がより重要になると考えられます。 […]自動車の機能を決める鍵、ソフトウェアの開発におけるセキュリティ
2023年1月9日現在、自動車はWireless KeyやETC、GPSなど多くの通信で外部と繋がっており、Connected(コネクテッド)、Autonomous(自動運転)、Shared & Services(シェアリング&サービス)、Electric(電気自動車)のCASEを制す企業が2020年代以降の自動車業界を制す、と言われています。 このCASEに代表されるように、自動車に求められる機能は拡大しつつあります。これまで自動車メーカーは特定のハードに合わせてソフトウェアを開発してきたハード定義型自動車を開発してきましたが、現在、開発を効率化し、自動車産業の新たな発展に寄与するとして「ソフトウェア定義型自動車(SDV)」への転換を目指す自動車メーカーが増加しています。 到来するソフトウェア定義型自動車(SDV)の時代 従来、顧客が車に求めたのはハード面的観点である「外形・色・内装のデザイン」でした。それに追加して、近年求められているのはGPSによる地図表示と道の案内、センサーによる事故防止機能などドライバーを支援するソフト面的観点の機能にスイッチしてきています。これより、自動車メーカーは「各種センサー・カメラ・レーダー、距離計測デバイス」などの機能を付加することに主眼を置いたソフトウェア定義型自動車(SDV)の開発を進めています。 ハードウェアの標準化が加速している今、従来のハードウェア中心主義から付加価値を決定する要因と想定されるソフトウェア中心へと自動車の開発の軸がシフトしています。日本、海外に関わらず、自動車の進化がソフトウェアによって実現される世界が近づいています。 車両用オープンソースソフトウェア(OSS)の増加 先述の通り、特定のハードウェアに合わせてソフトウェアを個別に開発してきた既存の自動車と異なり、開発したソフトを様々なハードウェア上で実行できるような自動車が注目を集めています。 具体的には、顧客に求められる機能を実現するため、コネクティビティユニット、インフォテインメントシステム、自動運転システムなどのより高度なシステムが開発されるのに伴い、多くのソフトウェアが使用されています。これらの増加するソフトウェアのニーズにこたえるため、オープンソースソフトウェア(OSS)をより多く採用し、開発されたシステムに統合する動きが増えてきています。 オープンソースソフトウェア(OSS)を使用する理由は以下の通りです。まず、通信スタックと暗号化ライブラリなど、すぐに利用できるコードで様々な機能を実現できるためです。次に、OSSの開発をサポートするための大規模なコミュニティが存在するためです。最後に、ライセンスの種類によって条件があるものの多くのコードが無償で使用できるためです。 自動車産業を対象としたOSSの一つ、AGL(Automotive Grade Linux)を紹介します。AGLは2018年発売のトヨタ自動車「カムリ」に採用されており、車載インフォテインメントシステムに焦点をあてています。その他にも、自動運転を実現するAutowareや機能安全を考慮したRTOS(リアルタイムOS)のZephyr Projectなど様々な自動車産業を対象としたOSSが知られています。 このように利益が多いため、自動車産業を対象としたOSSは多く使用されていますが、自動車産業でソフトウェア開発を行う際の課題もあります。 車両用オープンソースソフトウェア(OSS)の課題 考慮すべき主な課題はライセンスコンプライアンスとセキュリティです。 まず、ライセンスコンプライアンスについて説明します。OSSにはライセンス条件が異なるさまざまなライセンスタイプがあり、ライセンスタイプによって、OSSコンポーネントを自由に使用できるかどうか、帰属告知が必要か否か、またはOSSコンポーネントを含むリリースされた製品に対しても同じライセンス条件でリリースする必要があるのかどうかが規定されています。法的な観点から、ソフトウェアを開発する組織は各ライセンスタイプで定義されたライセンス条件を順守することが重要であり、遵守できなければ、訴訟のリスクが発生しえます。 実際に、自動車の事例ではないが、スマートテレビやDVDプレーヤーなどに含まれるBusyBoxと呼ばれるGPLのUNIXユーティリティーの著作権を侵害したことによる、家電メーカー14社に対する訴訟が発生しました。このうち13社が和解し、残る1社は欠席裁判で敗訴し罰金の支払いを命じられています。 次に、OSSとセキュリティについて説明します。自動車に限らず、ソフトウェアは開発中にセキュリティの脆弱性がソフトウェアコードに混入する可能性があります。自動車産業は他業界と比較して特に、ソフトウェア開発に厳しい条件があることで知られています。しかし、自動車産業に限定しない目的で開発されたOSSコンポーネントを一部組み込むと、それが自動車産業の要件を満たさず、セキュリティリスクをもたらす可能性があります。 実際に、OSSの脆弱性が車載システムへの攻撃を引き起こした事例は数多くあります。そのうちの一つ、Tesla(テスラ)「モデルS」に対するハッキングを紹介します。まず、車載システム(Linux)のOSSであるWebブラウザ上に存在した脆弱性により、攻撃者がブラウザ権限を獲得したことで、攻撃者がターゲットシステムにアクセス可能となりました。その後OSSであるLinuxカーネルの脆弱性によって攻撃者が管理者権限を獲得し、ターゲットシステムの乗っ取りに成功しました。管理者権限を獲得することで、攻撃者がCANパス上で任意のメッセージをリモートで送信でき、様々な車両機能に影響を与えるエントリポイントになりました。 このような課題に対して、どのような解決策があるのでしょうか。 有効な対策であるAutoCrypt Security […]アウトクリプトが「2022 Red Herring Top 100」に選出されました。
次世代のモビリティ社会の実現に向けた自動運転セキュリティ及びMaaSソリューションを手掛けるアウトクリプト株式会社(AUTOCRYPT Co., Ltd.、https://www.autocrypt.jp、本社:韓国ソウル、代表取締役 金・義錫、以下アウトクリプト)は、この度Red Herring(レッドへリング)から、世界中の最も期待されるイノベイティブな企業100社に与えられる「Top 100 Global」を受賞しました。 今年で25年を迎える「Red Herring Top 100 Global」は、IT業界で最も権威のある賞の一つで、北米、アジア、ヨーロッパで最も革新的な技術を持つベンチャー企業の中でも将来性が期待されるTop100企業を選出する賞です。Google、Youtube、Twitter、Alibabaといったグローバル企業を輩出してきたベンチャー企業の登竜門だと言われています。アウトクリプトは自動車セキュリティを展開する企業としてはアジア初受賞になります。 アウトクリプトは、2007年から自動運転におけるセキュリティ技術の開発に取り組んで、車載セキュリティ及びC-ITS分野で注目されるV2X技術を提供しています。UNECE WP29やISO/SAE 21434など、自動運転の拡大によって更に法規制も厳しくなっている中、今年自動車の開発ライフサイクルにおけるセキュリティ対策として車載ソフトウェア専用ファジングテストツール「AutoCrypt Security Fuzzer」と車載OSS脆弱性診断・自動分析ツールの「AutoCrypt Security Analyzer」をリリースするなど、自動車OEM/Tier1との緊密な連携による高度なセキュリティソリューションを提供しています。 現在としては、このセキュリティ技術を踏まえ、モビリティ分野での拡張を図っています。 車両管制から、今後実用化が予想される交通弱者向けの交通システム、マルチモーダルモビリティサービスに至るまで、様々なモビリティサービスプラットフォームの基盤構築を積極的に展開しています。 【アウトクリプト 代表取締役 金・義錫 受賞コメント】 技術開発が加速するモビリティ分野において、国内外に数多く存在する企業の中から弊社が選ばれて、本当に光栄に思います。モビリティの技術革新はすでに始まっており、さらに速いスピードで我々の生活を変えていくと確信しております。当社は自動車そのものを超え、モビリティを取り巻くインフラの安全性、ひいてはモビリティサービスプラットフォームとの融合を通じて、一歩先を見据えた技術革新に挑んできました。今後も強力な安全性とコネクティビティを実現し、持続可能なモビリティ生態系の構築に貢献していきたいと思います。 […]